建退共証紙を貼る。
3100円だか310円だかの専用証紙。
それぞれの社員専用の手帖にそれを貼ることで退職金がもらえ、
どのくらい貯めたかで退職金の額が変わるらしい。
どのような仕組みなのか、本当に世の中に必要なものなのかもよく分からないまま、
誰かの退職金のために、私は一枚一枚建退共証紙を貼ってゆく。
建退共証紙は切手のような形状をしている。
「手帖にはなるだけ奇麗に貼って下さい。
くれぐれも破かないようにして下さいね。
一枚3100円するので。」
と、上司。
まずは4枚、慎重に切り取り、
糊を丁寧に伸ばして1枚ずつ4冊に貼ってみた。
掴めた作業を、今度は効率を良くするために、
作業を分けてまとめてやってしまう。
では、まず、切ってしまおう。
144枚の建退共証紙。
一枚一枚切り取り線に折り目をつけ、慎重に切り取っていくが、さすがに途中で飽きがくる。
だけど丁寧にやらなきゃいけない。(一枚3100円)
あと残り何枚かも分からない建退共証紙。
占いながらちぎったら誰か手を差し伸べてくれるだろうか。
「好き、嫌い、好き、嫌い、好き・・・」
なんとか144枚の建退共証紙を占い抜きで切り分けて、
続きの5冊目から貼ろうとしていると上司の人が慌ててやってきた。
「そ、そそそ、そ、それで貼るんじゃないですぅ〜。」
私も驚いて、
「じゃ何で貼るんですか?」
とそのまま聞き返してしまったが、
上司は慌てて、水を含んだスポンジを持ってきた。
水で貼れるらしい。
どうりで切手のような形状をしていると思ったぜ。
建退共証紙のやつ。

2014年2月、OL10日目の話
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