あれ?
短編って、こんなにすごかったっけ?? というのが正直な感想。
まだ収録されている短編小説の、1作目を読んだばかりのところなのに
買ったばかりのルーズリーフの1枚目に感想を書き、そして今ワードを開いている。
『やりなおし世界文学』を手に取り開いて、
思い出したのは海外文学のことだけじゃなかった。
著者である、津村記久子さんのことも思い出した。
久方ぶりに読みたくなり選んだのが、
一番最近発刊されていた、
こちら。
うそコンシェルジュ。
(収録の11作中、1編目『第三の悪癖』)※
とある企業に勤める主人公は、高校時代からの友人に「もう相談に乗れない」というメールを3週間送れずにいる。かたや芸能界では常々胡散臭いと感じていたマルチな俳優Cの不倫スキャンダルが発覚、会社のランチタイムにも同じ部署の面々の自由な感想がちらほら飛び交う。そんな中、そのスキャンダルの情報量が常軌を逸していると噂の別部署(生産管理部門)中山さんが、ある午後、人目につかない場所である行動をしているのを目撃する。
共感の嵐、あるいは、嵐のような共感がポイントポイントで散りばめられている。
たとえば、
●ひとつの芸能ニュースを巡って昼ごはんの時間に関係のない社員同士であーだこーだ言うところ。
・そしてそこには必ず持論があるところ。
・その情報について異常に詳しい人がいるところ。
●アプリを導入することで今抱える悩みをどうにかしようとするところ。
・そのほか、お菓子、好きなミュージシャン、自動販売機の飲み物、アバター。
どれも会社で、というところもポイントだ。
どこかの企業、どこかの会社(工場なども含む)で働く主人公を描かせたら、
津村記久子の右に出るものはいないのではないか。
(芥川賞を受賞した『ポトスライムの舟』を最初に読んで以来、)私は常々、そう思っている。
収録作1、2、3と読み進めて、ひとつひとつを読み終えるたび本を閉じ、ため息をつく。
数ページの物語の中に、こんなに心を震わせるものが詰まっているなんて。
短編小説って、こんなにすごかったっけ。
今、タイトルにもなっている『うそコンシェルジュ』を読む手前。
2025年6月11日
・・・ おまけ ・・・

本の裏表紙で見つけた、
たぶんアバター。
※ こんなあらすじでは伝わらないだろうが、
これは、大人の友情の話だ。
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