まさか。
まさか私に、内線がかかってくるなんて思いもよらなかった。
この場所で働きだして9日。
まさか。
― 2月12日水曜日
今日は上司の人も立て込んでいるらしく、
自分にできることをやってもすぐ終わり、
簡単に言うと「ド暇」で、ではいかにこの時間を過ごすか、
今まで教わったことを片っ端からやろうと思っても3こくらいですぐ終わり、
はてどうしたものか、
そうだ、この資料とこの資料を見比べて、
載ってる社員の名前を照らし合わせよう、
あ、この人はこっちの紙ではこの部署なのにこっちの紙ではこの部・・
「呼ばれてるよ。」
隣に座る40代女性社員Aさんの声で、
そういえば電話がなっていたことに思いあたる。
周囲が私を見る(ような気)。
どうやら電話は私の元だけで鳴っていることらしいことが分かった。
一瞬でわかったのはそのくらい、つまり “私に 内線”というそれだけで、
Aさんに謝辞を述べることもなく私はただ「えぇっ!!?」と驚いてしまった。
内線が鳴るだけで驚く者の方がオフィスでは驚かれるだろうがそんなことを気にしている余裕はない。
新人OLの私は完全に動揺しかしておらず、
いつもなら出さない超低音ボイスで、
「はい。◯◯です。」
と応答した。
やはり私の元にかかってきたのだ、私は自分の名を名乗ろう。
(後に皆さん内線にも自分の部署だけで応答していることが判る。)
「△△課の、##です。」
・・知らない。
そんな人、私は知らない。
私は入社して(派遣されて)9日目のOLだ。
自分の部署でさえ交流がままならない中、
他部署なんて檻が見える程隔離された気分でいるのだ。
てんぱっていることも重なって結果、
「あ。どうも。」
(なんとズボラな!ズボラな挨拶になってしまった!)
(どうも、じゃねーーよ!
20代の不良みたいな挨拶してんじゃねーーよ!)
しかし不意をつかれたOLにできる最高の挨拶、それが
「どうも」
だったのだ。
静かに相手の話す内容を聞き、「少々お待ち下さい。」と一貫した LAWボイスで答え、
受話器は何処に置いたのだったか、上司の元へかけつけ、早口で相手の言っていた内容そのままを伝え上司が「保留にしてください。」と言うので駆け足で自分のデスクへ戻り、
今日のところは「保留」を押した。
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