上司の犬

ずいぶん前の話になるが、仕事初日、
上司と二人きりで決行された歓迎ランチ会において反省していることは

“相づちをしすぎたこと”

だ。

相づちというより“返し”の方が正しいかもしれない。

相手が気持ちよく話せるように心がけすぎて、
必要以上のことを言ってしまう。

今までやったアルバイトの多くは接客業だったので、
その影響かもしれない。

例えば、上司が自分が犬を飼ってることなどを話した時も、犬種から年齢まで聞いてしまう。
　
だから上司が気を良くして

「もう人間の女より犬のメスのほうがいいですよ〜。」

などと言うときも、
ただ笑うか困るかすればいいものを、

「もうこりごりですか〜、人間の女は〜！」

などと、社員旅行の宴会中の部下みたいな切り返しをしてしまう。

だから上司も更に気を良くして、
　


「チロルちゃんって呼んでるんです。」
　

と、
犬の愛称を教えてくれたのだ。
　

—— もう、必要以上の返しは、すまい。

私は初日にして胸に誓った。
　

2014年6月13日
　

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