読んだ本 – カン・ファギル「別の人」


このところ、韓国文学にはまっている。

はまる、と言ってもそれほど読書量の多い方ではないので、

まだ3〜4冊!くらいしか読んでいないのだが、

そのどれも、日本のとはまた違う、ユニークさがかいま見えたり、
あとは文章の抑揚が(抑揚のなさ、とも言えるかも)、他のどの国のとも違って独特だと感じるのはやはりそのオリジナルに端を発しているんだろう多分。

――


カン・ファギル 著 「別の人」(小山内園子・訳)

まず、言っておきたいのは、私のように図書館でジャケ借り(あるいは買い)をして読むような本ではない、ということだ。

なぜならヘビーだから。

ある程度、覚悟してから読んだほうがいい。

物語の主軸となるジナは、
同じ職場の先輩でもある恋人から5回にわたる暴力を受け、
警察に通報し、裁判も行うが、まるで納得のいかない結果に
ネット上の掲示板に、自分の体験の詳細を書き込む。

すると今度は同じ職場で一番仲がよいと思っていた女性から、
社内でのよくない評判と合わせて実名をさらされ、さまざまなSNSを含めネット上で誹謗中傷の的になる。

とあるツイートを見たジナは、その投稿をした人物を探るため大学のあった村へ戻ることにする。


冒頭の章に書かれている。
"最近一番羨ましいのは、私の話を何の意味もないと思える人のことだ。"

とてもよくわかる。

話が進むと、他にもいろんな人の目線が浮かび上がる、
"自分は何も悪いことをしていないのに、なぜ、何か過ちを犯した気がするんでしょうか?"

とてもよくわかるのである。


フェミニズム論を読むより、この本を読んだほうがいいような気がする。
好きな作家のフェミニズム論を読んでも、どこか影響を受けるばかりで、
自分はどこか置いていかれているような、ただ相手が立派だという印象だけ受けて
どうもついていけない感覚だけが残った。
この本は、自分の立ち位置で考えなければならない状況をつくる。

私はいくつのことを笑ってごまかしてきたんだろう。
笑って昇華させることは何も悪いことではないけれど、
ひとり親の家庭であることを「お父さんが蒸発した!」とただ"蒸発"という響きの面白さでもってたぶん本当の理由じゃないことを冗談めかして話していたし、
DVの経験も、「水たまりを引きずられてぇ〜!」と笑い話にした。それが自分なりの気丈さだったとしても。

読後の今、自分はなんとなくぽつ〜んとしている。

でもこの本を読んで、何もうまくいかない、と思うところからは抜けたように思う。

作中で奮闘する、DV被害を受けた〇〇のようにはいかないけれども、でも。

女子のグループ性、嘘、自分探し、過去、正しさ、自尊心、そして罪悪感。

作中には"罪悪感"というワードがよく出てくる、というか私の目に付く。

つらくて重いストーリーではあるけれど、寄り添いがないとは思わない。


抜群に翻訳がすばらしかった。
本文の中でも幾度か泣きそうになるところもあったけれど、
いちばんストレートに胸を突いたのは、訳者あとがきの、一番最後の部分でした。

カン・ファギル 訳:小山内園子
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他、フェミニズム系の本で唯一購入した本

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
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同じ作家の本もひきつづき読んでみようと思っている。

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