「おつかれさまです!」
そう言って入ってくるひとつ階の下、技術部のおじさんがいる。
この会社の中でもかなり気さくな部類に入る中年男性だ。
そしてその人は、
用事を終えて出てゆき、
また5分後に現れる時も
「おつかれさまです!」
そう言って入ってくる。
朝でも夕方でも、
誰からの応答が得られなくても
「おつかれさまです」と腹から声を出す中年社員は、
もはや気さくというより勇ましい。
その人の特徴がもう1つある。
自分の部署の人間を
全員「ちゃん」付けで呼ぶのだ。
私たち経理課の人間と真面目な話をしている時にも、
「ああ、それはタケちゃんがやった。」
などと言われると、かなりどうでもいい話に思えてくるから不思議だ。
私も同じように呼びたい!
と胸の内で思っているのだが、
その人がそれを実行できるのは、長年勤めてようやく得た上役の特権なのだ。
「ちゃん」付けが。
ただ、難点は、
“長谷川”という名字の人は“ハセちゃん”、
“山田”なら“ヤマちゃん”と呼ぶので、
“ハセ”や“ヤマ”以下の部分をこちらが考えなければならないのに数秒を要することである。
「タケちゃんがやった」
と言われて、
竹山? 竹村? 武正? 武部? それとも竹城?
などと考えていたら
ただの「竹」だったりして、
やっぱり拍子抜けする。
だけどちゃん付けは、悪くないと思う。
仲いいっぽい。

2015年1月29日公開分


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