以前「恐怖の内線」でも書いたように、
派遣のOLにとっていちいち行動にストレスがかかるのは、
人を知らないからだと思う。
新入社員の扱いとは異なるので、
部署以外の人にまでわざわざ挨拶して回っていないのだ。
つまりは誰が誰やら分からない。
だが、私のところにやってくる精算書類は別部署からのものがほとんどなわけで、
何か間違いがあれば、私は手元にある座席表だけを頼りに話しかけなければならない。
(そのストレスを避けようと、メールで済ましてしまうことも多い。)
先日、営業部付き事務の女性が長方形の箱を持って、
「これ、坂崎さんからのお土産です〜。」
と言ってお菓子を配っていた。
私のところにも晴れてお土産は回ってきて、10分もせぬ内に食べた。

美味しい・・・!
そしてその後に来る感情、それは
「お礼が言いたい!」だろう。
私はすぐさま横に立てかけてある座席表を取り出し、「坂崎さん」を探した。
向こうの向こうのブロックにいる、
あの人だな、と思った瞬間、
その人がちょうど立ち上がった。
私の席の近くの出入り口に向かって来ようとしている。
どうしようかな、声かけようかな、
お礼だし、言って悪いことないよな、あ、でも
他の人たちももらったのに自分だけ立ち上がってお礼言うなんて
ヒンシュクかっちゃうかな。ああでもお礼が…
「春日さん、お出かけですか?」
・・・・・・。
別の人が呼びかけたその人は、坂崎さんではなかった。
危うく爽やかに人違いをするところであった。
私は座席表を見取る自信もなくし、
目を閉じてお菓子の後味だけを噛み締めていた。

2014年10月22日
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